クールな方がやかんだ

日々考えたことや好きな映画・ヒーローのことを記録していきます。基本的にニッチ志向。

【ネタバレ感想】少女ピカレスク

少女ピカレスク(2018年、日本)

ホラー系映画の簡単な紹介と感想です。
今回は日本の配信ドラマ「少女ピカレスク」。
しっかり面白いですので是非観てみてください。

www.fami-geki.com

『少女ピカレスク』本予告

たいへんかわいらしいサムネイルですね。


映画概要

CSチャンネルファミリー劇場が運営する動画配信サービス「ファミリー劇場CLUB」にて公開されたオリジナルドラマ。
先行公開として期間限定で劇場でも放映されていました。

  • 監督・脚本 井口昇
  • 出演    椎名ひかり
          長澤茉里奈、松永天馬、神門実里、上埜すみれ、
           武田玲奈(友情出演)

独断による評価

恐怖度    ★★★★☆
嫌悪度    ★★★★☆
耽美度    ★★★★★
愉快度    ★☆☆☆☆
少女頑張る度 ★★★★★
また観たい度 ★★★☆☆

ネタバレあらすじ

アイドルのヒカリはネットで生放送配信を行っている。
新曲で「家族」をテーマにしたPV撮影をするのだと張り切り、撮影でダンサーとして共演したアイドルの日菜子と仲良くなったと嬉しそうに語っていた。
明るく無邪気にふるまうヒカリだが、配信中、PV撮影中、ライブ中に、突然挙動不審になる様子を見せる。
暗い目をしたヒカリは、「ちーちゃんがいつも私の邪魔をする」と呟いた。

「ちーちゃん」とは、父親に虐待されていたヒカリが創り出した強気で残虐な別の人格。ヒカリが誰かと絆を持つことを否定し、ヒカリの愛するものをすべて破壊しようとする。
PVの監督が自宅に不法侵入してきたことをきっかけに、ヒカリの体は完全にちーちゃんの支配下に置かれた。ちーちゃんは監督を拷問し、ヒカリと友達になった日菜子を拷問し、日菜子の友達のアイドル・亜依を拷問し、そしてヒカリがずっと憧れてきたモデルの彩乃をも拉致する。
だが彩乃は命乞いをせず、ヒカリに対して抱く純粋な愛情を口にした。動揺したちーちゃんは、自分はヒカリではないと叫び、綾乃を殺す。

残ったのはヒカリとちーちゃん。二人は夜の闇の中で踊り続ける。


感想とかについて

CSのファミリー劇場を楽しく視聴している筆者は、このドラマの宣伝をよく目にしていました。
椎名ひかりちゃんの天使のようなかわいらしい映像の合間に挟まる、ダークで危険な光景。アイドルを主演にしておきながら、「ピカレスク(=悪党物)」のタイトル。
これは絶対面白いと思ってハードルを上げて鑑賞しましたが、やっぱり面白かったです。


恐怖度:何が起きるか分からない怖さ

ヒカリ/ちーちゃんが一体何を始めるのか、日菜子と亜依に一体何が起きるのか、というスリラー感がしっかり味わえます。

映画としての宣伝記事では内容について触れていないものが多いですが、ファミリー劇場CLUBでは「サイコホラー」で「二重人格もの」であるということが、あらすじとサムネイルでバッチリネタバレされています。

ネタが割れているにもかかわらずハラハラできるのは、構成がうまいことになっているお陰でしょう。(もちろんどういう映画かまったく知らずに観た場合には、戸惑いと恐怖がさらに大きくなるはずです)


物語はまず、被害者である「ヒカリ」「日菜子」「亜依」それぞれの自撮り視点で描かれます。

最初はヒカリ。かわいらしく健気なアイドルにチラチラと覗く闇と、ヒカリを取り巻く人物たちに起こる事件。「何がどうなってるんだ」と視聴者に思わせたところでヒカリは姿を消してしまいます。

次に日菜子。かわいいヒカリと仲良くなれたことを純粋に喜ぶ様子を配信する日菜子に、危険が迫っていることが示唆されます。それが姿を現すとともに日菜子も姿を消してしまう。

そして亜依。ヒカリと日菜子の関係に混ぜてもらえない亜依は、ヒカリの奇妙さが気になります。そして示唆どころでなく直接的な危険を被った亜依は、視聴者が思ってきた「黒幕はヒカリ」であるということをはっきり口にし、そしてまた直接的な被害にさらされてカメラから消えます。


そして物語は加害者である「ちーちゃん」の視点へ。
何がどうなるのか分からない恐怖のホラーから、
苦痛と憎しみに嫌悪するホラーへと変わっていきます。


嫌悪度:与えられる苦痛と感じざるを得ない憎悪

ちーちゃん編では、ちーちゃんの執行する虐待と拷問が描かれます。

「痛い痛い!」「やめてあげて!」というスプラッタホラーな嫌悪感
確かにこんな描写がメインではあるものの、そればかりではありません。

ちーちゃんがどうしてこんなことをするのか。
どうしてそこまでヒカリを幸せにしたくないのか。

それはちーちゃんが愛情を求めているからに他なりません。

父親から暴力を振るわれ愛情を感じられずに育ったため、ヒカリは足りない愛情を素直に求めます。一方ちーちゃんは、「求めても手に入れられない」ことを恐怖するあまり、そんなものいらないと破壊することを選びます。

日菜子と亜依を拷問するちーちゃんの端々に見え隠れする、二人の友情への「うらやましい」思い。認めてしまえば幸せになれるかもしれないのに、ちーちゃんはどうしても受け入れられない。

愛に飢える気持ちを暴力と憎しみをぶつけることで代替しようとするちーちゃんに対して視聴者が抱く、「こんなこともうやめようよ」という悲痛な感情もまた、この映画が生む嫌悪感の一つです。


耽美度:眼球舐めはポルノだ

ビジュアルの「美しさ」にもこだわりが感じられます。

まず、ヒカリの天使のようなかわいらしさと、
ちーちゃんのダークでロックなアバンギャルドさの対照。
特にちーちゃんはその外見から、心の中を満たす狂気が存分に見て取れます。牙のごとき八重歯で人の腕を噛み噛みしちゃう。目が白いのはやりすぎな気もしましたが、似合ってるからいいのです。
ピカロに必須のカリスマ性も充分。ちーちゃんの動きを眺めているだけでも楽しめます。
エンドロールで流れるPVでも二人の対比がいかんなく表現されています。

ヒカリの憧れるモデル・彩乃の純粋さもまた美しい。
彩乃はハサミで舌をちょんぎると脅されているにもかかわらず、自分が抱くヒカリへの愛情をはっきりと口にし、自ら舌を差し出します。
冷たいハサミに舌を差し出す彩乃の尊さと、悪魔じみたちーちゃんが見せる人間らしい狼狽と葛藤が、綺麗に映し出されています。


そして目玉シーン*1は日菜子と亜依の絆。

ちーちゃんに命じられて亜依を拷問する日菜子は、さらにちーちゃんの指示により、苦痛を和らげるために亜依の眼球を舐めてあげます。本当に癒されたかのように淫靡な息をつく亜依。ちーちゃんがぶちこわそうとした二人の絆が、ここで確固なものとして現れたかのようでした*2

直後、日菜子は自分の手を犠牲にして亜依を助けようとします。苦痛を恐れてちーちゃんの言いなりになっていたくせに、ここに来て愛情を証明した日菜子。恐怖によってすくんでいた亜依への想いが、眼球舐め*3によって呼び起こされたための行動だったのかもしれません。


愉快度

多くのホラーには恐怖シーン=笑いどころに見える場面がけっこうありますが、この映画にはほとんどそれがありません。

ホラーが笑えちゃう理由というのは ①画がシュール ②行動が間抜け のどちらかであることが多いのですが、画は残虐か美しいかのどちらかですし、登場人物の間抜けな行動もほぼないのです。


ただ一点だけ、ちーちゃんに拷問されたPV監督の「腕の皮が剥がれたー」発言は笑わざるを得ない。
ドキュメンタリーでぴかりんも爆笑してたので仕方ないです。監督は一応真面目に書いた台詞らしいですが*4


少女頑張る度:アイドルキャストたちの見事な演技力

主演の椎名ひかりちゃんは映画初出演で初主演。二重人格な上に一人は狂人という難しい役なのですが、演技に違和感は全然ありません。
元々ひかりちゃんというアイドル自身が中二病でダークでメタルなキャラクターなので、ちーちゃんはまさにはまり役*5なのです。ときおり挟んでくるデスボイスが最高ですね。

そんでもって役柄とビジュアル的には不遇なものの、亜依役の神門実里ちゃんがまたうまい。
なりふりかまわない絶叫が本当に気持ちいいです。


ファミリー劇場CLUBで制作ドキュメンタリーも公開されているので、本編の後にぜひ観てみてほしいです。
こんなふうに撮影してたんだという状況が分かりますし、キャストたちのかわいさや仲の良さ、熱心な演技の特訓風景が楽しめます。


また観たい度

前半の被害者側の描写が、後半の加害者側の描写で明らかになっていく構成のため、もう一回観ても楽しめるでしょう。
ストーリーばかりでなくキャラクターや描写を魅せる映画でもあるので、ほとぼりが冷めた頃にふと観たい気持ちになるかもしれません。

少なくともぴかりんのことは好きになりました。
テーマ曲、是非買いたいです。


椎名ぴかりん / 確認事項:しあわせとかについて(OFFICIAL)



今回の記事はここまで。また会おうぜ。


*1:うまいこと言いました。

*2:この前のシーンでちーちゃんも日菜子の眼球を舐めかけますが、結局やりませんでした。日菜子に受け入れてもらえないかもという恐怖ゆえの躊躇だったのかもしれません。それゆえ、亜依が日菜子を受け入れるシーンを見せつけられたちーちゃんは「美しい」と口にしたのでしょう。

*3:眼球舐めは実際に性的嗜好として存在します。気持ちいいらしいですが、不用意に口と接触させると雑菌が入って危険なのでやめておきましょう。

*4:「言葉で説明しないと分からない人がいるから……」というのは確かに。

*5:というかこの脚本自体、椎名ひかりちゃんありきで作られたもののようです。